【工具屋解説】釿(ちょうな)とは?用途・種類とおすすめ販売店
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- サルトくん
2021.05.25 2026.02.03
(出典:松本社寺建設)
古来より、日本の木造建築にはさまざまな伝統工具が使われてきました。
その中でも釿(ちょうな)は、現代では目にする機会が少ない一方で、木肌に独特の表情を残せる道具として今なお一部の職人に使われています。
本記事では、釿の用途や名前の由来を押さえたうえで、刃先形状・柄素材による種類の違い、作業に活かすための基礎知識を解説します。
さらに、入手が難しくなりつつある現状も踏まえ、状態の良い釿を手に入れるための現実的な選択肢として、信頼できる販売店も紹介します。
目次
伝統的な大工道具「釿(ちょうな/手斧)」とは?
(出典:陣太鼓本舗)
釿(ちょうな)とは、木材の表面を削るために使われてきた斧の一種です。
「釿」のほか、「手斧」と書いて「ちょうな」と読む場合もあります。
釿は、古くは石器時代から木材加工に用いられてきた非常に歴史のある道具で、日本に限らず世界各地で使用されていた記録が残っています。
そのため、日本固有の道具というよりも、人類が木を加工し始めた初期段階で生まれた、普遍的な工具のひとつといえます!
画像を見ると分かるように、釿は直角に曲がった柄の先に平たい刃が取り付けられた独特の形状をしています。
この刃を鍬のように振り下ろすことで、木材の表面を大胆に削り取り、柱や梁などの角材を荒削りする目的で使用されてきました。
現在では、木材の表面を削る作業といえば鉋(かんな)が一般的ですが、日本の歴史において鉋が登場するのは、少なくとも弥生時代以降とされています。
それ以前の木工では、釿が木材加工の中心的な役割を担っていました。
このような背景から、釿は「人類が発明した原初の木工工具」ともいわれ、「大工道具の化石」と表現されることがあります。
釿(ちょうな)の名前の由来

釿(ちょうな)の名称の由来にはいくつかの説があります。
なかでも有力とされているのが「手斧(ておの)」の読みが時代とともに変化し、「ちょうな」になった説です。
古い日本語では、音の変化や訛りによって読み方が移り変わる例が多く、工具名においても同様の変遷が見られます!
釿もその一例と考えられています。
そのほか、下記のような説もあります。
- 作業時に大きく手を振り下ろす動作から「てふるば」と呼ばれるようになり、それが転じて「ちょうな」になった
- 道具の形状が漢字の「丁」に似ていることから「ちょうな」と呼ばれるようになった
なお、現代において「手斧(ておの)」と読まれる場合は、一般的に鉞(まさかり)や鉈(なた)など、片手で扱える小型の斧を指すことが多く、釿とは区別される傾向にあります。
アウトドアシーンで使われるハンドアックスも「手斧」に分類される道具の1つです。
何に使える?現代における釿(ちょうな)の主な用途
(出典:名栗加工 むか井)
鉋や電動工具が普及した現代において、釿(ちょうな)を日常的に目にする機会はほとんどなくなりました。
しかし、完全に過去の道具となったわけではなく、現在でも特定の分野や職人のあいだで使われ続けています。
代表的なのが、宮大工や木地師(椀・盆・器などを制作する職人)といった、伝統的な木工技術を継承する職人たちです。
釿は主に、丸太や角材の表面を粗く削る「斫り(はつり)」作業に用いられ、木材の形を大きく整える工程で活躍します!
釿で加工された木材の表面には、鉋や機械加工では生まれない独特の削り跡が残ります。
この釿跡を意匠としてあえて残す仕上げ技法は「名栗(なぐり)」と呼ばれ、日本建築において古くから装飾的な表現として用いられてきました。
波打つような削り模様は、手仕事ならではの温かみや力強さを感じさせ、木の表情を豊かに引き出します!
今日の鉋(かんな)が発明される以前は、まず釿で木材の表面を荒削りし、その後に槍鉋などを使って平滑に仕上げるのが一般的な工程でした。
実際、釿は非常に古い木工道具であり、古墳時代の遺跡や、弥生時代の登呂遺跡から出土した木材にも、釿による加工痕が確認されています。
中世以降、木材加工技術が大きく発展した後も、釿による表面加工や装飾文化は廃れることなく受け継がれてきました。
建築の意匠として釿跡を積極的に取り入れてきた例は世界的にも珍しく、日本独自の木の文化といえます。
釿の扱いは決して簡単ではなく、振り下ろす角度や力加減を誤ると、木材を割ったり狙った形に仕上がらなかったりします!
そのため、一朝一夕で身につく技術ではありません。
それでも、失われつつある手仕事の価値を守るため、釿を用いた住宅施工や家具制作に取り組む職人が、現代でも少数ながら存在しています。
参考までに、実際に職人が釿を使っている様子は、以下の動画で見ることができます。
手に入れるなら今?! 失われつつある釿(ちょうな)の文化
(出典:ざ・京都)
釿を専門に鍛造できる鍛冶職人は日本国内にほとんど残っておらず、刃だけでなく柄を含めた「本来の釿」を新たに製作することが極めて難しい状況です。
今後は現存する釿が減る一方で、入手難易度はさらに高まっていくと考えられます!
もし自宅の物置や倉庫に、使われていない釿が眠っているのであれば、それはすでに貴重な文化財的価値を持つ道具といえるでしょう。
また、これから釿を手に入れたいと考えている場合も、「いつでも買える道具」ではないことを理解しておく必要があります。
釿(ちょうな)は、単なる古い大工道具ではなく、日本の木工文化や建築儀礼と深く結びついた存在です。
その象徴的な例が、京都・広隆寺で毎年元旦に行われる「釿始め」と呼ばれる儀式です。
これは京の番匠(大工の棟梁)が一年の作事安全を祈願する伝統行事で、現代まで受け継がれてきました。
儀式の終盤では、本堂前に据えられた御木に向かって、奉納用の釿が厳かに振り下ろされます。
その場では釿のほか、曲尺や墨指といった伝統的な大工道具も披露され、道具そのものが神聖な存在として扱われていることがわかります。
こうした文化を支えてきた釿そのものが、存続の危機に直面しているのです!
釿(ちょうな)の種類①:刃先の形状
ここからは、釿の種類について詳しく見ていきましょう。
釿は刃先の形状によって用途や仕上がりが大きく異なり、地域性や職人の技法に応じて多様な形が生み出されてきました。
刃先の形状は、大きく以下のタイプに分類されます。
東型
(出典:越後の大工刃物・大工工具)
東型は、丸太や太材の荒削りから仕上げまでに使われる、比較的オーソドックスな形状の釿です。
刃先は3寸2分(約12cm)前後のものが多く見られます。
ちなみに、上の画像もその通りの長さです。
奴型
(出典:越後の大工刃物・大工工具)
奴型は、東型よりも刃先が横方向に大きく広がった形状をしています。
なお、上の画像は3寸6分(約13.6cm)の長さとなっています。
蛤型
(出典:越後の大工刃物・大工工具)
蛤型は、その名のとおり刃先が蛤のように緩やかに湾曲した形状の釿です。
直線的な刃に比べ、木材への当たりが柔らかく、板材などの仕上げ加工に向いています。
コウモリ型
(出典:越後の大工刃物・大工工具)
コウモリ型は、刃先が左右に大きく張り出した、非常に特徴的な形状の釿です。
その見た目がコウモリの羽を思わせることから、この名称で呼ばれています。
刃幅が広く、独特の削り跡が残るため、意匠性を重視した名栗加工や装飾的な用途で使われることがあります。
その他(岩国型、名栗型など)
(出典:越後の大工刃物・大工工具)
釿の刃先形状は、地域ごとに独自の進化を遂げてきました。
掲載画像の岩国型は、刃の両面を加工している点が大きな特徴で、独特の削り味を持っています。
このほかにも、名栗型や秋田型など、地域名を冠した釿が数多く存在します!
それぞれの土地の木材事情や建築様式、職人文化に合わせて形状が洗練されてきた結果といえるでしょう。
釿(ちょうな)の種類②:柄の素材
続いて、釿の柄に注目してみましょう。
釿は刃を振り下ろして木材を削る道具であるため、柄には強い衝撃とねじれに耐える頑丈さが求められます。
素材選びは、使い勝手だけでなく安全性にも直結します。
釿の柄に用いられる素材は、主に以下の2種類です。
エンジュ
(出典:Wikipedia ⒸFanghong, July 10, 2005.)
エンジュは中国原産の落葉樹で、日本では街路樹としても広く植えられています。
初夏になると白い花を咲かせるため、見かけたことがある方も多いでしょう。
木質は非常に堅く、割れにくいのが特徴で、古くから住宅の内装材や家具、彫刻材などに利用されてきました。
釿の柄にエンジュが用いられるのも、強度と耐久性に優れているためです!
繰り返し衝撃が加わる作業でも折れにくく、長く使える素材として重宝されてきました。
なお、エンジュは中国では縁起の良い木とされ、「上品」という花言葉を持ちます。
花を乾燥させたものが止血剤として使われてきた歴史もあり、実用面と文化的背景の両面で価値の高い樹木です。
エゴノキ
(出典:Wikipedia ⒸGondahara, May 27, 2006.)
近年に作られた釿では、エゴノキ製の柄が使われているものも見られます。
エゴノキは別名チシャノキとも呼ばれる落葉樹で、日本全国に自生しています。
エゴノキは適度な硬さと粘りを併せ持ち、加工性に優れている点が特徴です!
そのため、日本の伝統工芸において幅広く用いられてきました。
代表的な例としては、和傘の柄(ロクロ)が挙げられます。
釿の柄としても、手に馴染みやすく、衝撃を受け止める性質が評価されています。
長時間の作業でも扱いやすく、実用性の高い素材といえるでしょう。
花言葉は「壮大」です。
可憐な花を咲かせることから、盆栽や庭木、シンボルツリーとして親しまれています。
【豆知識】釿(ちょうな)の柄はどう作る?加工方法と基本の仕込み方
(出典:名栗加工 むか井)
釿は、市販の交換柄を差し替えて使う工具ではありません。
刃の形状や使い手の体格、振り下ろし方に合わせて、柄を自分で仕込み、仕上げて完成させる道具です。
エンジュやエゴノキを釿の柄として使うためには、直材のままでは不十分です。
釿特有の振り下ろし動作に対応するため、柄には大きな湾曲を持たせる必要があります。
この曲線が、刃の入射角を安定させ、手首や腕への負担を軽減します。
柄を湾曲させる加工方法は、主に次の2つです。
1つは、生木の段階で枝を紐や木枠で縛り、時間をかけて曲げクセを付けたうえで伐採する方法です!
樹木が成長する力を利用する伝統的な手法で、理想的な繊維方向を保てる点が特徴です。
ただし、長い時間と手間がかかるため、釿の需要が減った現在では、ほとんど見られなくなりました。
もう1つは、伐採した枝を煮込み、木を柔らかくしてから曲げる方法です。
いわゆる「曲げ木」と呼ばれる技法で、現代ではこちらが主流となっています。
木材を十分に加熱することで繊維がしなやかになり、割れを防ぎながら湾曲を与えることができます!
ある程度の経験は必要ですが、決して難しい加工ではありません。
曲げ加工が終わった後は、乾燥と成形を繰り返しながら、手に馴染む太さと形状に整えていきます!
その後、刃を差し込み、くさびを使って固定することで「仕込み」が完了します。
重要なのは、一度で完成させようとしないことです。
実際に振ってみて違和感があれば削り直し、調整を重ねながら仕上げていきます。
高品質な釿(ちょうな)をお得に買える、中古工具の専門店「アクトツール」
釿は、鍛冶職人の減少や需要の縮小により、新品での入手が年々難しくなっている大工道具です。
とくに実用に耐える品質のものとなると、流通量は限られ、価格も高騰しがちです。
そうした背景から、状態の良い中古品を選ぶという選択は、現実的かつ賢い方法だといえます!
その際に注目したいのが、工具専門の中古販売店であるアクトツールです。
アクトツールは、電動工具だけでなく、釿のような専門性の高い伝統的な大工道具も取り扱っており、一般的なリサイクルショップとは一線を画します!
入荷した工具は一点一点、専門知識を持つスタッフが状態を確認し、必要に応じてクリーニングや調整を実施しています。
そのため、「中古=使いにくい」「すぐダメになる」といった不安を感じにくく、現場や制作で実用できる品質が保たれています。
すでに製造されていない古い釿や、現代では再現が難しい造りのものに出会える可能性があるのも、中古工具専門店ならではの魅力です。
まとめ:伝統の釿(ちょうな)を使いこなし、仕事の幅を広げよう
釿(ちょうな)は、木材を削るための道具という枠を超え、日本の木工技術や建築文化そのものを体現してきた存在です。
石器時代から続く歴史、地域ごとに発展した刃の形状、職人が自ら仕込む湾曲した柄など、そのすべてに合理性と美意識が詰まっています!
現代では電動工具や鉋に役割を譲り、実用の場面は限られていますが、名栗加工をはじめとした意匠表現や、宮大工・木地師の仕事において、釿はいまなお価値を失っていません。
むしろ「均一ではない仕上がり」や「手仕事の痕跡」こそが評価される時代において、釿の存在感は再認識されつつあります。
一方で、釿を鍛造できる鍛冶職人はほとんど残っておらず、新品の入手は今後さらに難しくなると考えられます。
専門性の高い大工道具を安心して探したい場合は、工具専門の中古販売・買取を行う アクトツールがおすすめです!
販売だけでなく買取にも強いため、手持ちの工具を売却して購入資金に充てるといった柔軟な選択も可能です。


















