【徹底解説】ドリルの選び方・種類をご紹介!
- Yoshida.K
2022.02.22 2022.04.20
ボール盤を始めとした穴開け工具で必ず使用するドリルですが、実は構造・長さが異なったドリルはたくさんあります。よく見るドリルは「ツイストドリル」と呼ばれ、ねじれている形状が大きな特徴です(^^)
他にも先端部分が異なるものなど、作業内容に応じて適したドリルは多岐に渡ります。具体的に長さ・構造・表面処理・用途・素材の5種類が異なっているドリルがあり、それぞれ得意な作業があります。
そこで今回はドリルの種類や分類について紹介し、あわせて適した作業内容についても解説します。どれも非常に簡単なので、ぜひ最後までチェックしてみて下さいね。
目次
ドリルの選び方と種類は?
ドリルは様々な種類が販売されており、大きく分けて下記の5点が異なります。
–長さ
–構造別
–表面処理
–用途
–素材
それでは次章から順番に説明していきます(^^)
ドリルの長さ
まず一つ目は、長さです。ドリルの長さはL/Dで表され、「L=長さ・D=直径」を指します。L/D値が大きくなれば、ドリルは長くなります。ドリルが長くなることで、その分深い穴を開けることができます(^^)
ドリルの長さにはそれぞれ名称があり、下記のように分けられます。
名称 | L/D |
スタブドリル | 2〜3D |
レギュラードリル | 4〜5D |
ミドルドリル | 5〜8D |
ロングドリル | 10〜50D |
※また、ミドルロング(5〜8D)をロングドリル(10〜50D)と呼び、ロングドリル(10〜50D)をスーパー(エクストラ)ロングと呼ぶこともあります。呼び方が異なるケースがあるので、必ずL/Dの値を確認するようにしましょう。
スタブドリル
L/Dの値が2〜3と非常に短いスタブドリルです。ちなみにスタブ(stub)は日本語で切り株の意味で、太くて短いという意味。浅穴加工をするシーンで役立ちます。
不二越(NACHi)
超硬ドリル アクアドリルスタブ AQDS 12mm
材質 | 超硬合金 |
被削材 | 炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼・調質鋼・ダイス鋼・高硬度鋼 一般構造圧延鋼・ステンレス鋼(420)・鋳鉄 |
寸法 | 刃径12mm×溝長51mm×全長108mm×シャンク径12mm |
レギュラードリル
L/D値が4〜5の一般的な長さのレギュラードリル。浅すぎず、深すぎない穴開け加工をする際はレギュラードリルがおすすめです。
オーエスジー(OSG)
超硬ADドリル 4Dタイプ AD-4D-3.2
材質 | 超微粒子超硬合金 |
表面処理 | EgiAsコーティング |
被削材 | 低・中・高炭素鋼、合金鋼、調質鋼、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄 |
寸法 | 刃径(mm):3.2/溝長(mm):28/全長(mm):74 |
ミドル(ロング)ドリル
L/Dが5〜8と長く、深穴加工をする際に役立つのがミドル(ロング)ドリルです。
不二越(NACHi)
ハイスドリル テーパーシャンクロングドリル
材質 | ハイス(HSS) |
被削材 | 一般構造圧延鋼・炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼・鋳鉄 アルミニウム合金・銅合金 |
寸法 | 刃径8.5mm×溝長175mm×全長275mm×シャンク MT1 |
ロングドリル(スーパーロングドリル・エクストラロング)
L/D値が10以上あり、非常に長いのがロングドリル。名称が色々とあるので、L/D値を合わせて確認することが大事です(^^)
深穴を開ける際に役立ちますが、非常に長いので先に「センター穴ドリル」を使って下穴を開けてから使用するのが一般的。
オーエスジー
ADO-50D 6.0 超硬ドリル 油穴付き 1本
材質 | 超硬 |
被削材 | 一般鋼・調質鋼・ステンレス鋼・ 鋳鉄 |
寸法 | 全長:368mm |
次は、ドリルの「シャンク」部分についてです。シャンクは大きく分けて2つなので、非常に簡単です(^^)
ドリルのシャンクの形状
ドリルのシャンク形状は、上記画像の「ストレートシャンクドリル」に加えて「テーパーシャンクドリル」の2つに分かれます。
ストレートシャンクドリル
刃とシャンクが同じ直径になっているストレートシャンクドリル。シャンクの部分がストレートになっています。
不二越(NACHi)
ハイスドリル ストレートシャンクロングドリル
材質 | ハイス(HSS) |
被削材 | 一般構造圧延鋼・炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼 鋳鉄・アルミニウム合金・銅合金 |
寸法 | 刃径2.2mm×溝長60mm×全長150mm |
テーパーシャンクドリル
正式名称はモールステーパードリルです。ドリルの大きさが様々あり、ドリル径の大きさはMTで表されます。MTは0〜7段階まであり、MT値が大きくなればその分穴径も大きくなります。
不二越(NACHi)
ハイスドリル コバルトテーパーシャンクドリル
材質 | コバルトハイス(HSS-Co) |
被削材 | 一般構造圧延鋼・炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼・調質鋼・ダイス鋼 ステンレス鋼・Ti合金・耐熱合金・鋳鉄・アルミニウム合金・銅合金 |
寸法 | 刃径28.6mm×溝長180mm×全長300mm×シャンク MT3 |
ドリルの構造別
ドリルは「ボディ(刃)」と「シャンク(柄)」の組み合わせでできています。その中でも「ボディ&シャンク一体型」と「ボディ&シャンク別素材型」に加えて「ボディ取り替え型」の3構造があります。下記の通りそれぞれ名称があります。
ボディ&シャンク一体型 | ムクドリル(ソリッドドリル) |
ボディ&シャンク別素材型 | 付刃ドリル(ロウ付ドリル) |
ボディ取り替え型 | スローアウェイドリル |
ムクドリル(ソリッドドリル)
最もよく見られる構造のムクドリル(ソリッドドリル)。ボディとシャンクが一体になっているのが大きな特徴です。素材は超合金・ハイスが使われていることがほとんどとなります。
NACHi
ハイスドリル SD 0.8mm
材質 | ハイス(HSS) |
被削材 | 一般構造圧延鋼・炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼・鋳鉄 アルミニウム合金・銅合金 |
寸法 | 刃径0.8mm×溝長11mm×全長34mm×シャンク径0.8mm |
付刃ドリル(ロウ付けドリル)
ボディとシャンクが別素材になっているのが付刃ドリルです。ボディ部分はダイヤモンド・超合金・サーメットなどの素材。シャンク部分をハイス素材などにしてコストを抑えています。ボディとシャンク部分はロウなどで溶着します。ちなみに刃先だけをロウ付けしたドリルは「先ムクドリル」と呼ばれます。
フクダ精工(FKD)
スローアウェイドリル
ドリルの刃先(ボディ)部分を交換して使用できるのがスローアウェイドリル。刃先を取り替えることができ、複数のチップを組み合わせてドリル先端の再現が可能。つまり刃先だけを交換して、様々な切削条件に対応できます。利便性は良いのですが、最研磨ができない製品も多いので注意が必要。
京セラ
マジックドリル S20-DRZ145580-05 (THD01025)
材質 | – |
被削材 | – |
寸法 | 全長:126mm |
ドリルの表面処理
ドリルには表面処理をしているものがあり、「黒染め処理」「TiN処理」が代表的。もちろん表面処理がされていないドリルもあります。
表面処理なし
表面処理のされていない一般的なドリルです。
不二越(NACHi)
ハイスドリル テーパーシャンクロングドリル
材質 | ハイス(HSS) |
被削材 | 一般構造圧延鋼・炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼・鋳鉄 アルミニウム合金・銅合金 |
寸法 | 刃径8.5mm×溝長175mm×全長275mm×シャンク MT1 |
黒染め処理
黒染め処理をしているドリルは、「耐食性」を持っており腐食しにくいのが特徴。アルカリ水溶液の中にドリルを浸けることで、黒色の四三酸化鉄の皮膜が出来ます。四三酸化鉄がドリルを包むことで、腐食しにくくなります。
不二越(NACHi)
ステンレス用ドリル
材質 | コバルトハイス鋼 |
被削材 | 鉄工・ステンレス鋼 |
寸法 | 直径4.2mm×溝長38mm×全長83mm |
TiN処理
チタン(Ti)と窒素(N)を反応させることからTiN処理と呼ばれます。Tin処理をすることで硬度が高くなり「耐摩耗性」が上がります。金色になっているのが特徴。
不二越(NACHi)
ハイスドリル Gスタンダードドリル
材質 | ハイス(HSS) |
被削材 | 一般構造圧延鋼・炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼・調質鋼 ダイス鋼・ステンレス鋼・鋳鉄・アルミニウム合金・銅合金 |
寸法 | 刃径8.5mm×溝長75mm×全長117mm×シャンク径8.5mm |
ドリルの用途
ドリルをどのように使うかで、適したドリルの種類があります。上記は軸受の加工をする際に役立つセンタードリル。他にも代表的なドリルを次章から見ていきましょう。
段付きドリル
段付き穴や面取り加工を同時に作業することができる段付きドリル。ボディ(刃)先端が細く、シャンクが太い刃であることが大きな特徴です。
TRUSCO
段付ドリル 六角穴付ボルト用 M5 TSRMM5
材質 | 高速度鋼 |
被削材 | – |
寸法 | 8.8 x 1.6 x 1.6 cm |
リーディング(スターティング)ドリル
ツイストドリルなどで穴加工をする前に使用するリーディングドリル。位置決めや精度を高める為の工具で、別名スターティングドリルとも呼ばれます。ツイストドリルより溝が短く、ねじれ角を小さくしています。
オーエスジー
NCLDS6X90
材質 | 高速度鋼(HSS) |
被削材 | – |
寸法 | 15.6 x 9.8 x 1 cm |
センタードリル
センター穴を開ける為に使われるのがセンタードリルです。旋盤に付け、軸受の加工をする際に役立ちます。ただ、刃先が少し脆いケースがあります。その為、ただ位置決めをするだけであればリーディング(スターティング)ドリルがおすすめ。
イワタツール
センタードリルCD2.0X6
材質 | コバルトハイス |
被削材 | – |
寸法 | 9.3 x 1.2 x 1.1 cm |
ドリルの素材
ドリルに使われる素材は上記の「ハイス鋼」に加えて「超硬合金」があります。それぞれ特徴があるので、先に表でまとめます。
素材 | 特徴 |
ハイス鋼 | ・折れにくい ・コスパが良い |
超硬合金 | ・高温時でも耐久性有り ・精密加工が得意 |
ハイス鋼
「ハイスピードスチール」を略してハイス鋼と言います。超硬合金よりも折れにくいことから、高速回転する工具を使うシーンで活躍します。
オーエスジー
超硬合金
硬質の金属炭化物を加熱することで「超硬合金」の素材ができます。高温時の耐久性が非常に高く、精密加工をするシーンで活躍。ただ、ハイス鋼と比べて割高になるケースが多いです。
不二越(NACHi)
材質 | 超硬合金 |
被削材 | 炭素鋼・合金鋼プリハードン鋼・調質鋼・ダイス鋼・高硬度鋼 一般構造圧延鋼・ステンレス鋼(420)・鋳鉄 |
寸法 | 刃径3mm×溝長16mm×全長48mm×シャンク径3mm |
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はドリルの選び方と種類をご紹介しました。一口にドリルと言っても構造や長さがそれぞれで、多くの種類が販売されています。また、作業用途によって適したドリルもあります。
用途に合ったドリルを選ぶことが、作業を効率的に進めるコツです。ぜひ、この記事を参考にしてみて下さいね(^ ^)
それでは、最後までご覧頂きありがとございました!
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システム開発課 Yoshida.K プロフィールはこちら
新卒で入社し、店舗での買取・販売スタッフ経験を経て現在は、アクトツールのマーケティング責任者として活躍中。多くのお客様との接客経験から得た工具に関する知識を活かして、ホームページの監修をメインに行っています。