槍鉋(やりかんな)とは?工具のプロが解説!

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  槍鉋

皆さんは槍鉋(やりかんな)という工具をご存知でしょうか?

槍鉋は鉋の仲間ですが、通常の鉋よりもさらに昔から日本に伝わった伝統的な工具のひとつです。

「木を表面を削る」という主な用途は鉋と同じですが、槍鉋を使えば槍鉋ならではの独特な風合いを木に表現することができます。

今回の記事では、そんな槍鉋の使い方や魅力をお伝えしていきます。

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槍鉋(やりかんな)とは?

 

槍鉋とは、台鉋(だいがんな)いわゆる通常の鉋が伝わる前から利用されていた鉋です。

その歴史は古く、飛鳥時代にはもう利用されていたといわれており、あの法隆寺の柱も槍鉋を使って作られたという話も有名です。

先は槍のように尖っていて、通常の鉋とは違った見た目をしています。

刃先は少し上に向かって反っているような形状になっていて、この刃を研ぐのにも高度な技術が必要です。

槍鉋

槍鉋の刃先

槍鉋の使い方

槍鉋は、通常の鉋と同様に、手前に引くようにして木を削ります。

通常の鉋では、木の表面を平らで滑らかにすることができますが、槍鉋では表面を平らにするだけではなく、木目にさざ波のような独特な模様をつけたり、素材の風合いをだすこともできます。

わずかな削り跡が木の表面に残り、人の手による美しさや味わいが表現できるのが魅力です。

削った際に出る木くずは、細く渦巻状になります。

現在では大工や工芸家が主に利用している槍鉋ですが、鉋が一般的になってきてからは槍鉋はあまり利用されなくなっています。

槍鉋 仕上げ

(引用:コナラハウス

槍鉋と法隆寺の関係

法隆寺 槍鉋

法隆寺と槍鉋には深い関係があります。

なぜかというと、法隆寺の復旧作業には槍鉋が利用されたからです。

その法隆寺の宮大工だったのが、西岡 常一(にしおか つねかず)棟梁です。

槍鉋 西岡常一

西岡常一(1908ー1995)

(引用:日本歴史的人物伝

 

戦前から戦後にかけて、当時の日本では槍鉋の使用は途絶えていて、能率の良さから通常の鉋が一般的になっていました。

しかし、法隆寺を含めた室町時代以前の建物は、鉋が日本に登場する前から使われていた道具で建てられており、当時の風合いそのままに修復・復元するには、槍鉋がなければできないと言われていました。

そこで、飛鳥時代から受け継がれていた技術を呼び起こし、槍鉋の復活に貢献したのが西岡棟梁です。

西岡棟梁の使っていた槍鉋

(引用:法隆寺へ行こう!

槍鉋の復活により建築当時の美しい趣きを表現することができるようになりました。

法隆寺だけにとどまらず、飛鳥時代から受け継がれていた寺院の建築技術を後生に伝えた西岡は、「最後の宮大工」と称されました。

槍鉋(やりかんな)の研ぎ方・仕上げ方は?

 

前述したように、槍鉋を研ぐには高度な技術が必要です。

そのため、プロでなければ専門の鍛冶屋などへ預けることをオススメしますが、最近ではYoutubeでも研ぎ方の動画があがっています。

ここでは「自分で槍鉋を研いでみたい!」という方のために、簡単な研ぎ方の手順と参考動画をご紹介します。

槍鉋

槍鉋の研ぎ方~

  1. まずはダイヤモンドの砥石で砥石自体を磨いていき、表面を滑らかにしていきます。
  2. 砥石の表面が十分滑らかになったら、全体を濡らして滑りをよくしていきます。
  3. ここから槍鉋を研いでいきます。
    刃を砥石に完全に密着させず、少し浮かすようにしながら切断面だけを砥石に密着させ、前後に動かし少しずつ研いでいきます
  4. 刃先と柄の近くの刃では角度が違うので、よく見て場所によって角度を変えながら、気を付けて研いでいきます。
  5. 特に木を削る際には刃先の部分を使うことが多いので、刃先は念入りに研ぎます
  6. 再度、砥石の表面をしっかりと磨いてから、裏面も同じように研いでいきます。裏面は刃先が反りあがらないよう十分注意をしながら、きちんと平面が保持された砥石で仕上げましょう
  7. 最後に刃を表に戻してから、刃先を砥石に密着させ、手前に引くようにして研ぎます。

槍鉋の研ぎ方の実演動画

 

宮大工が完璧な角度で槍鉋を研ぎあげる姿はまさに職人技です。

英語での解説もついていますが、海外からも日本の伝統芸能を学ぶ需要があるほど、槍鉋と研ぐ技法は優れた技術だということがわかります。

動画の9:10あたりから、実際に研いだ槍鉋で木を削るシーンも登場しますので、実際に削る様子もぜひご覧ください。

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槍鉋(やりかんな)の名工は?

ここからは、そんな槍鉋の名工をご紹介します。

同じ槍鉋といっても、名工によっては作り方や模様・特徴が違いますが、どれも美しく、使いやすさのための工夫が凝らされています。

清玄作槍鉋(きよげんさく)

(引用:清玄作槍鉋

清玄作槍鉋は新潟の大工道具鍛冶のひとつです。

槍鉋の中では安価なほうで、かつ切れ味良く実用的に使える品です。

右からでも左からでも使えます。

研ぐ際には、切断面は柔らかめの砥石で研ぎ、刃の裏は堅めの砥石で研ぐようにしましょう。

また、柄から抜いて研ぐと柄が振られずに研ぎやすいです。

清介作槍鉋(せいすけさく)

(引用:清介作槍鉋

清介作槍鉋は、美しい刃が特徴的です。

研ぎあげると、積層の地金の層が美しく平行に見え、地金は木の年輪のように重なって見えます。

基本的に裏は黒裏になっていて、鉋のように裏出しのために叩く必要がありません。

清介作槍鉋は完全な平面の砥石で研ぐことができるので、専用の砥石を用意する必要がないところは手軽といえます。

元寿舟弘作槍鉋(げんじゅふなひろさく)

(引用:元寿舟弘作槍鉋

元寿舟弘作槍鉋は、槍鉋作りのキャリアの長い舟弘氏の作品で、研ぎやすい地金が特徴です。

素材には錬鉄が使用されており、錬鉄は製作が難しく、この地金を使える鍛冶屋は少ないと言われています。

柄は比較的長く、藤巻部分は藤の厚み分掘り下げられてつくられています。

また、完全な楕円の槍鉋の柄はかなり完成度が高く、その技術の高さがうかがえます。

田斎作槍鉋(たさいさく)

(引用:田斎作槍鉋

田斎作槍鉋はその長年の経験による完成した形と使いやすい形状が魅力です。

刃は他の槍鉋と比べても反りがしなやかで美しく、かつ滑らかな角度で作られています。

籐巻の朴材の柄付や皮の鞘付、桐箱付で1セットになっています。

刃先が突き出にくいように工夫をされた、頑丈な皮製の鞘が付いています。

内橋圭介作槍鉋(うちはしけいすけさく)

(引用:内橋圭介作槍鉋

内橋圭介作槍鉋は標準的なサイズの作りで、オリジナルなデザインと仕上げ具合が特徴的です。

内橋氏は鉋や小刀など作る作品の種類が幅広く、丁寧な作品作りが評価されてる人気の高い鍛冶屋です。

通常の槍鉋よりは刃の巾がやや広めに作られていて、この形状により槍鉋自体の寿命が長くなる効果があります。

使いやすさが追及されており、平面の砥石でも研げるように切断面が仕上げられています。

鉋と違って裏押しが面倒なことはありません。

まとめ

 

いかがでしたか?

槍鉋は日本に古来から伝わる伝統的な工具のひとつです。
便利な道具は他にもあるものの、神社仏閣の復旧作業や伝統工芸品の制作など、木目の風合いを豊かに表現するために槍鉋は欠かせません。

あまり一般的に目にすることの少なくなってきた工具ですが、資料館などを訪れると今でも展示がされています。
ネットショッピングでも槍鉋の購入は可能ですが、歴史のある伝統的な槍鉋を見学したい方は、実際に資料館を見に行ってみてはいかがでしょうか。

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