安全靴の規格は何がある?JISとJSAAとは?
- Yoshida.K
2022.08.22 2023.06.29
重量物の取扱作業、ロールボックスなどの運搬作業などで着用するのが安全靴。
多くの工場などで重量物を取り扱うため足先に危険のある現場や、滑りやすい作業で義務づけられています。
しかし、「JIS規格◯種合格品」「JSAA規格◯種認定」など表示がわかりにくいと感じる方もいるかもしれません。
今回は安全靴の規格についてと、どういった場所でどの種類が使われているか説明していきます!
目次
安全靴の規格はなにがあるの?
安全靴には大きく分けて2つの種類があり、JIS規格・JSAA規格という安全基準が設けられています。
安全靴を指す場合はJIS規格が正式な安全靴です。
JSAA規格はプロテクティブスニーカー(プロスニーカー)と呼ばれるもので、JIS規格の安全靴とは工場内軽作業など使用場面に違いを持っています。
安全靴の規格の違いとは?
(引用:Amazon)
安全靴のJIS規格は、足先の保護能力を持った「JIS T8101安全靴」と、静電気によるスパーク発生防止の効果を持つ「JIS T8103静電気帯電防止靴」の2種類。
一般的に呼ばれている安全靴はT8101の方です!
重量物を取り扱う工場や重機が出入りする建設現場などで、足元の危険を回避するために着用されます。
静電気帯電防止靴はガソリンスタンドなど、可燃性の気体が静電気によって発火する危険を減らす効果を持っています。
大規模火災のリスク防止や、静電気が大敵な電子部品を取り扱う職場で採用されています。
安全靴の規格「JIS」とは?
一般的にはJISに近いつま先の安全性能を持つプロテクティブスニーカーなどを総称して「安全靴」と呼ぶ場合がありますが、正しくはJIS(JIS T 8101)に合格した靴を「安全靴」と呼び、これは「JISマーク」の表示をしていることで確認することができます。
(引用:日本安全靴工業会)
安全靴のJIS規格は、2020年3月に国際規格に合わせるかたちで改定されました。
従来のJIS T8101から新しい試験方法が独立して、安全靴の性能分類は12項目になり、安全靴は多くの工場・建設現場で会社から着用が義務付けられています。
JIS規格の安全靴は
作業時の事故によって生じる障害から着用者の足を保護するための機能を組み込んだ靴
と定められています。
中でも大きく3つの安全規定が定められていて、安全靴と呼ばれるためには規格に基づく
- 耐衝撃性(決められた高さから20kgの尖った鉄パイプを落とした時に隙間が確保できるか)
- 耐圧迫性(重量をかけた時の先芯の強度)
- 表底のはく離抵抗(靴の表面と靴底が剥がれずに保つ強度)※革製のみ
の性能を保持した製品であり、
加えて12個の付加的性能として
耐踏抜き性(P)
かかと部の衝撃エネルギー吸収性(E)
足甲プロテクタの耐衝撃性(M)
耐滑性(F)
耐水性(W)
耐切創性(C)
電気絶縁特性(I)
靴底の高温熱伝導性(HI)
靴底の低温熱伝導性(CI)
表底の耐高熱接触性(H)
表底の耐燃料油性(BO)
甲被の耐燃料油性(UO)(引用:ミドリ安全)
を備えている必要があります。カッコの中のアルファベットは、製品のラベルに記載される付加的性能を示す記号です。
(引用:日本産業標準協議会)
JIS製品の見分け方として、確認する方法は中敷(インソール)と靴底の表示です。
中敷(インソール)のかかと部にJISマークと先芯の使用素材・付加的性能の表示がされています。
JIS規格の安全靴には作業に対応した等級があり、超重作業用「U種」、重作業用「H種」、普通作業用「S種」、軽作業用「L種」と分類されています。
一般的に普及しているのはS種で、L種は工場内の軽作業に用いられています。
U種とH種は、より安全に配慮する必要がある現場での利用がほとんどです。
安全であればいいという訳ではなく、作業の内容によって必要とする等級を選ぶことが大切です。
下に各等級の一覧を掲載しますので、参考にしてみてください。
耐衝撃耐性 | 重量物落下時耐性 | 耐圧迫性能 | 表体はく離抵抗 | |
超重作業用「U種」 | 200J | 102cm/20kg | 静止時約1.5t | 300N以上 |
重作業用「H種」 | 100J | 51cm/20kg | 静止時約1.5t | 300N以上 |
普通作業用「S種」 | 70J | 36cm/20kg | 静止時約1t | 300N以上 |
軽作業用「L種」 | 30J | 15cm/20kg | 静止時約450kg | 250N以上 |
メリット
JIS規格の安全靴のメリットは、なんと言っても着用時の安全性の高さにあります。
工事現場、工場作業では周りに危険が多くある場所での仕事です。
- 重量のある物品が転がってぶつかる
- コンテナを積んだ台車など車輪に巻き込まれる
- 足元にオイルや洗剤など滑りやすい環境
- 工事現場で工具をよく持ち替える必要があり、道具落下の恐れがある
- 突起物が多い場所で動き回らなければいけない
これだけの危険が潜んでいる環境での作業では、自分の身を守る以外に相手にとっても巻き込まれる可能性を、できるだけ減らしたいものです。
通常のスニーカーでは足元に危険を及ぼす可能性がある状態で、安全に作業に集中することは難しいでしょう。
自動車製造や建築現場では荷重がかかる現場が多く、足先の安全性を守る意味でも先芯が鋼鉄製の靴がよく選ばれています。
先芯が鋼鉄製の靴は20kgの重量物が落下しても耐えうる強度を備えています。
デメリット
JIS規格の安全靴のデメリットは、高い強度による安全性の高さと引き換えに、靴自体が重くなること、鋼鉄製だと足先に負担がかかり疲れやすいことです。
靴の重量があるということは、現場で移動する際に動き回りにくいと言えます。
鉄製の素材が使われていることで、踏み締める動きや足指に力を入れると鋼材に接触して足の痛みの原因になることも考えられるでしょう。
小回りが効かない分、機敏な作業を求められる場合は足の負担増につながります。
鋼鉄製という点から冬場での作業で足先が冷えやすいことも難点の1つです。
特に外での長期間作業は先芯の鋼材が外気温の影響を受けやすくなります。防寒対策と現場の状況に合わせて使用することが望ましいですね。
安全靴の規格「JSAA」とは?
(引用:プロテクティブスニーカー)
JSAA規格とは公益社団法人日本保安用品協会の認定品に付けられています。
プロテクティブスニーカー(プロスニーカー®)、プロテクティブブーツ(プロブーツ®)と呼ばれているものが挙げられます。
海外からの安全靴輸入に伴い、市場に先芯採用の安全靴が増えた結果、消費者の混乱を防止する目的で設立されました。
足先に金属や樹脂先芯を採用し、一定の安全性・耐久性の基準に合格したスニーカータイプ製品に付けられています。
先芯は2種類。樹脂製と鋼鉄製に分かれています。
樹脂製は鉄製と比べて軽量で運動性能に優れています。
歩行時に重量を感じにくいので、作業中動き回る頻度が多い時に向いているでしょう。
鋼鉄製はスチール芯とも呼ばれ、高い安全性と耐久度が保証できます。そのかわり金属製なので重く、足先が圧迫されることで負担を感じるかもしれません。
JSAA規格にもJIS規格と同じく、3つの安全規定が定められています。
- 耐圧迫性(重量をかけた時の先芯の強度)
- 耐衝撃性(決められた高さから20kgの尖った鉄パイプを落とした時に隙間が確保できるか)
- 表底のはく離抵抗(靴の表面と靴底が剥がれずに保つ強度)
この他に付加的性能として
- かかと部の衝撃エネルギー吸収性
- 耐踏み抜き性
- 耐滑性
- 帯電防止性能
- 漏れ防止性能(※ブーツタイプ製品のみ)
を持っている製品を指すものです。
JSAA規格の安全靴には作業に対応した等級があり、普通作業用の「A種」と軽作業用の「B種」と分類されています。
JSAA規格のA種はJIS規格の普通作業用S種相当、B種はJIS規格の軽作業用L種の等級に当たる性能です。
(引用:公益社団法人日本保安用品協会)
上から型式認定合格標章、型式認定合格証明票(表)、型式認定合格証明票(裏)
JSAA規格認定商品の見分け方について、確認方法は靴のベロ部裏の表示です。靴には型式認定合格標章(型式認定タグ)と種別が付いており、商品箱には認定マークが表示されているものになります。
付加的性能を持っている商品はピクトグラムなど性能表示をよく確認する必要があります。
メリット
JSAA規格の安全靴はJIS規格に比べて
- 価格がリーズナブル
- 使用素材にメッシュ素材を採用することで通気性がある
- 布素材が多く使われているおかげで着用感が良い
- 靴一足の重量が約1/3と軽量
であることが挙げられます。
JIS規格に比べて工場のライン作業や軽作業など、運動性を重視した現場で使いやすいでしょう。使用できる素材も豊富で、デザインのバリエーションもあることから普段使いも可能です。
デメリット
軽量で通気性や運動性能に優れている一方で、JIS規格の安全靴に比べて足先の先芯強度はやや劣ります。
JSAA規格A種は、一般的に普及しているJIS規格普通作業用S種相当の耐久性が保証されていますが、それ以上の耐久性・安全性を確保した等級はありません。
付加的性能も厳格なJIS規格の製品ほどは高性能でないことが多い傾向にあります。
着用しやすいからと安全性の重視される現場での利用は、安全靴に想定以上の負荷がかかり、破損や重大な事故の原因となるでしょう。
安全性を一番に考えるのであれば、JIS規格の安全靴を使用するべきです。
JISとJSAAの違いは?
JIS規格のJIS T8101とJSAA規格の一番の違いは、使用素材、耐久性にあります。
JIS規格では靴の表面である甲被素材が牛革製・総ゴム製のみです。牛革製は革自体に一定の衝撃吸収能力があり、簡単な汚れは綺麗にしやすいと言えます。
JSAA規格で利用できるのは、革製・ゴム製の他に人工皮革・合成皮革・編物・プラスチックと素材のバリエーションが豊富です。
牛革製と比べても布が多く使われていることで、軽量・着用感の良さや靴のデザインの種類が豊富なこと、日常生活で履いていても違和感の少ない形という点で、扱いやすさを重視しています。
耐久性を比べるとJIS規格は重作業用の規格がありますが、JSAA規格には普通作業用までが限度です。
また、同じ革製・ゴム製だとしても、JIS規格は甲被素材の厚みに規定が設けられています。
JIS規格H種・S種は1.5mm以上でなければ認定されません。JSAA規格は甲被素材の厚みに規定が設けられていないので、同条件であっても耐久性に一歩劣る可能性があることを、認識しておくと良いでしょう。
まとめ
安全靴の規格と用途に合わせたメリット・デメリットや違いを知るきっかけになりましたか?
作業現場に合わせた安全靴の着用は、安全性を確保すると同時に作業効率の向上にも役立つでしょう。
メーカーによって必要とされる強度は違うので確認を取ることも大切です。
「必ずJIS規格の安全靴を使用すること」という規約がある場合、規格にあった安全靴を着用しなければ、会社側から罰則を課せられる可能性もあります。
自分にとって安全で最適な製品を選ぶ参考になれば幸いです。
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システム開発課 Yoshida.K プロフィールはこちら
新卒で入社し、店舗での買取・販売スタッフ経験を経て現在は、アクトツールのマーケティング責任者として活躍中。多くのお客様との接客経験から得た工具に関する知識を活かして、ホームページの監修をメインに行っています。