【工具屋が解説】サーモグラフィーとは?選び方&おすすめ機種
- Yoshida.K
2022.06.15 2022.10.04
「サーモグラフィー」というと、なんとなく知っている、聞いたことがあるという方が多いのではないでしょうか?
ご存知の方も多いように、サーモグラフィーは温度を検知するための機械です。
ところが実際に、どのような仕組みでサーモグラフィーが温度を検知し、なにができるのかを知っているという方は少ないかと思います。
実はサーモグラフィーにはいろいろな種類があり、測定温度の範囲や機能・形状などもさまざまなんです(^^)
今回の記事では、そんなサーモグラフィーについての具体的な解説や選び方の説明、さらには工具屋であるアクトツールが選ぶオススメのサーモグラフィーをご紹介していきます。
サーモグラフィーについて詳しく知りたい方や、サーモグラフィーの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
サーモグラフィーとは?
サーモグラフィーとは、目では見えない物体からでる遠赤外線を検知して、その温度差を色で可視化して計測するための装置です。
サーマルカメラが映し出す映像のことを、サーモグラフィーともいいます。
もともとテレビ番組などではよく見たサーモグラフィーですが、最近ではコロナ渦の影響もあって街中でもよく見かけるようになりました。
サーモグラフィーはどのような仕組みで温度を検知しているのでしょうか。
サーモグラフィの仕組み
地球上の物質は、人も物もすべて遠赤外線という電磁波を発しています。
物体の温度が高いほど遠赤外線の強さは強くなり、温度が低いほど遠赤外線の強さは弱くなります。
サーモグラフィーは、その遠赤外線をセンサーで検知・分析して、遠赤外線が強ければ映像を赤く表示し、弱ければ青く表示します。
大まかにわけると赤>黄>緑>青というように色別してくれるので、温度の差が簡単に可視化できます。
サーモグラフィーは遠赤外線を利用して対象の温度を検知し、対象に接触することなくリアルタイムで映し出すことができます。
そのため、近年のコロナ渦のように感染症対策でよく利用されるんですね。
さらにサーモグラフィーの特徴として、暗闇でも利用ができます。
カメラは光がある場所でしか利用ができませんが、遠赤外線はもともと目に見えない電磁波なので、サーモグラフィーは暗闇でも遠赤外線を読み取れます。
使用する環境に影響を受けず、どこでも利用が可能です。
サーモグラフィで何ができるの?
人の体温を測定する以外にも、サーモグラフィーはさまざまな対象の測定に利用されます。
例えば、住宅診断の際にも。
雨漏りを確認する際に、一見目で見ても変化がわからないような場所も、サーモグラフィーで見ると雨がしみ込んでいる部分は冷えて温度が低く表示されます。
断熱材の有無も壁をはがさずとも、断熱材がない部分は他の部分より冷えて温度が低く表示されるのでわかります。
住宅以外にも、設備診断でもサーモグラフィは便利です。
ソーラーパネルの点検では、パネル全体で太陽光を検知できているか、欠陥や接触不良などがないかよくわかります。
配電盤の点検などでも、漏電などを可視化できるので、電気設備からの出火などの大変な被害を事前に回避するのに役立ちます。
その他、送電設備や発電設備の点検なども機械を止めることなく診断ができますし、品質検査や商品開発・自動車設備の点検などなど。
サーモグラフィーは人の体温の検知以外にも、さまざまな現場で頻繁に利用されているんですね。
似ている機械
放射温度計の例
サーモグラフィーと似た機械に、放射温度計というものがあります。
飲食店などでもよく見かけるようになった、物体を映像でなく、温度だけを測定する機械です。
サーモグラフィーと同様赤外線を検知して温度を測っていることにはかわりないですが、面ではなく点での測定をしている、というのが大きな違いになります。
放射温度計を使えば、物体に触れることなく、温度だけをピンポイントで測ることができます。
サーモグラフィーの選び方は?
サーモグラフィーの具体的な仕組みが理解できましたか?
サーモグラフィーには、機能別にさまざまな種類があります。
ここからは、サーモグラフィーの細かい機能別にわけて、選び方を見ていきましょう。
熱画像解像度で選ぶ
熱画像解像度とは、どれだけ鮮明に画像を表示できるかの度合いのことです。
写真と同様ピクセルという単位で表します。160×120ピクセルや、320×240ピクセル前後が主流の解像度です。
解像度が低いほど表示されるのは荒い画像となり、解像度が高いほどより高画質となります。
画像が鮮明なほどより細かく検知はできますが、状況によっては温度さえわかれば画像の解像度はそこまで必要な場合もあると思います。
カメラと一緒で解像度が上がるほど値段も高額になるので、必要なぶんだけの解像度を備えたサーモグラフィーを選ぶようにしましょう。
温度分解能で選ぶ
温度分解能とは、検知できる最小の温度差のことです。
よく0.06℃や0.15℃などと表しますが、0.06℃または0.15℃刻みで温度が測れるということになります。
値が小さければ小さいほど、細かい測定のできる優れたサーモグラフィーということになります。
測りたい温度が人の体温のように+0.1℃単位であれば、あまり細かい温度分解能を気にする必要なありません。
ただ、機械の検知などのように細かい温度差まで区別する必要がある場合は、温度分解能をきちんと確認しましょう。
フレームレートで選ぶ
フレームレートとは、1秒間に何回画面を更新しているかという値です。
フレームレートが低いとカクカクとした画像をつなげ合わせたような映像に、フレームレートが高いとよりスムーズな映像となります。
固定しているものや、ゆっくりとした動きの対象を測定する場合は、6~9Hzほどのフレームレートの機種で十分です。
動きの速いものを測定する場合や、自分自身も動きながら測定をする場合は20Hz以上の機種がオススメです。
測定温度範囲で選ぶ
測定温度範囲とは、その名のとおりサーモグラフィーで測定できる温度の範囲です。
機種によって、−20°C~650°Cと幅広いです。
測定温度範囲の幅が広いほど、質の高いサーモグラフィーとなりますが、人の体温を測る場合などには600°C以上も必要ないですよね。
必要な測定温度の範囲を事前に考えてから、それにあった機種を選ぶようにしましょう。
形状で選ぶ
ハンディ型の例
ポケットタイプの例
サーモグラフィーの形状には、手に持って使えるハンディ型や、ポケットにいれて持ち歩けるカメラのような形のポケットタイプなどが一般的です。
スマートフォンに装着して使えるスマートフォン取り付け式のタイプも販売されています。
画像モードの有無で選ぶ
通常のサーモグラフィーには熱画像を写すカメラしか搭載されていませんが、可視光カメラも搭載している機種も多く存在します。
可視光カメラを備えている機種だと、PinP(ピクチャーインピクチャー)・並列表示・透過合成といった画像モードを選ぶことができます。
可視光カメラを搭載している機種は値段が多少高額になるので、必要に応じて選択しましょう。
機能で選ぶ
さらには、さまざまな便利な機能を備えているサーモグラフィーもあります。
例えば、Wi-Fi対応の機種であれば、スマホやパソコンに撮影データをすぐに送ることも可能です。
防じん・防滴に優れた機種であれば、屋外での利用でも雨を気にせず使用が続けられた里、粉じんによる故障も避けられます。
その他にも、データを外付けのSDカードに保存できるもの、ズーム・遠距離・望遠に対応しているもの、充電が切れても安心の乾電池式のものなど、種類はさまざまです。
メーカー
ここからはオススメのサーモグラフィーメーカーを3社紹介します。
どの機種にするか迷ったときは、今回紹介する3社から選ぶのもアリですよ(^^)
サーモグラフィーメーカーは多数ありますが、日本では海外メーカーも人気です。
TESTO
ドイツに本社を置くTESTO(テストー)は、環境測定ソリューションをメインに行う企業です。
1957年に創立されており、その後ポータブル環境測定器の研究・開発をメインに業績を拡大。
その中でサーモグラフィーの開発も行っており、スマート・プロフェッショナル・ハイエンドシリーズと幅広いニーズに応える機種を多数販売しています。
グローバルメーカーなので、世界各地に愛用者がいるメーカーです。
ボッシュ
電動工具の印象が強いボッシュですが、サーモグラフィーも販売しています。
TESTOと同じくドイツメーカーで、乾電池・バッテリーどちらも使えるサーモグラフィーが特徴です。
また、Bosch Thermalというアプリと連携して、スマホ・タブレットと連動することも可能。
ドイツメーカーらしい便利さと耐久性を追求した機種が多い印象です。
日本アビオニクス
最後に日本メーカーの紹介です。
日本アビオニクスは1960年に創業されて以来、情報システム事業・接合機事業・センシングソリューション事業を中心に事業を拡大。
機種の種類も多く、冷却型・高性能型・ハイコストパフォーマンスに加えてシステム構築用ネットワークモデルも販売しています。
その他火炎越し・ガラス表面計測モデルなど多岐にわたるので、用途に合わせて選ぶことが可能です。
上記で紹介した3社以外にも、中国の「HIKMICRO」や、アメリカのFLIRやFLUKEも人気です。
他にも今回は紹介できませんでしたが、日本メーカーのCUSTOMも市場で一定のニーズを得ています。
サーモグラフィのおすすめ機種をご紹介!
サーモグラフィーのさまざまな性能が理解できましたか?
性能や便利な機能をきちんと確認した上で、状況にあったサーモグラフィーを選ぶことが大切です。
ここからは、工具のプロであるアクトツールが選んだオススメのサーモグラフィを7選ご紹介いたします!
TESTO サーモグラフィー 868
まず紹介したいのはTESTOの868です。
シンプルな操作性とプロフェッショナルな機能を備えたモデルです。
無料の専用アプリを使用すれば、現場でもレポート作成やメール送信・オンラインへのアップロードなどが簡単にできます。
可視カメラが搭載されており、屋外での建物撮影時にスケール設定を適切に自動調整してくれます。
持ち運びに便利な専用ケース付きで、携帯性も抜群です。
熱画像解像度 | 160 × 120 |
温度分解能(℃) | ‐ |
フレームレート | 9Hz |
測定温度範囲(℃) | -30~100 / 0~650 |
重量 | 510g |
寸法(mm) | 219 × 96 × 95 |
TESTOサーモグラフィー872
TESTO製でよりスペックの高い機種を選ぶなら872がオススメ。
上述の868と同じくスマホと連携が可能で、モバイル機器と無線接続ができます。
建物内のカビ発生の恐れがある場所や構造上の欠陥の特定など、幅広い用途に使用できるプロモデルです。
可視カメラ付きなので、熱画像と一緒に可視画像も保存できるのも嬉しいポイント。
画素数 | 3.1メガピクセル |
温度分解能(℃) | – |
フレームレート | 9Hz |
測定温度範囲(℃) | -30〜100/0〜650 |
重量 | 510g |
寸法(mm) | 219×96×95 |
FLIR C3-X 赤外線サーモグラフィー 90501-0201
次に、アメリカのメーカーFLIRのC3-Xです。
建物や施設のメンテナンス、空調設備や電気修理などに使いやすいプロ向けのサーモグラフィーです。
FLIR Igniteクラウド接続により、撮影したデータを直接転送・保存・バックアップができ、スマホなどですぐに画像を確認できます。
3.5インチあるタッチスクリーンは操作しやすく、すばやく調査や修理内容の記録、さらには顧客との情報の共有にも役立ちます。
熱画像解像度 | 128 × 96(12288ピクセル) |
温度分解能(℃) | 0.07 |
フレームレート | 8.7Hz |
測定温度範囲(℃) | -20~300 |
重量 | 190g |
寸法(mm) | 138 × 84 × 24 |
FLIR T865 高性能ハンドヘルド型サーモグラフィーカメラ
FLIR製で高性能機種の800シリーズです。
測定温度範囲は「-40」まで対応しており、あらゆる現場で使用することができます。
180度回転光学ブロックにより、機械機器の状態を安全・快適に評価可能です。
レーザーアシストフォーカスなど高度な機能により、常に高精度で温度測定ができます。
また、デュアル視野角レンズと組み合わせると、広域スキャンと望遠スキャンをすぐに切り替えることもでき便利です。
赤外線解像度 | 640×480 |
温度分解能(℃) | 0.05(at 30) |
フレームレート | – |
測定温度範囲(℃) | -40〜120・0〜650・300〜2,000 |
重量 | 1.4kg |
寸法(mm) | 150.5×201.3×84.1 |
ボッシュ 赤外線サーモグラフィー GTC400C
ボッシュから販売されているサーモグラフィーGTC400Cの紹介です。
計測者のことを考えられたモデルで、コネクト機能で測定結果のレポート作成が簡単にできるようになっています。
測定モードは作業に応じて4種類から選択可能。
防じん・防水性能にも優れており、等級はIP53を取得しています。
Wi-Fiの利用はもちろん、USBケーブルにも接続できるので、データをパソコンなどに簡単に転送できます。
熱画像解像度 | 160 × 120 |
温度分解能(℃) | 0.05 |
フレームレート | ‐ |
測定温度範囲(℃) | -10~400 |
重量 | 540g |
寸法(mm) | 63 × 233 × 95 |
日本アビオニクス 赤外線サーモグラフィカメラ(ガングリップタイプ)G100
続いては、日本アビオニクスのG100です。
PinP・並列表示・透過合成といった豊富な機能を備えたハイスペックなサーモグラフィーです。
計測現場で画像診断をサポートしてくれるので、常にクオリティの高いデータを撮影できます。
4.0倍までズームが可能なので、遠くの被写体でも撮影が可能。
片手で簡単に操作できるガングリップスタイルなので、足場の悪い場所や高所などのさまざまな現場でも、安全に計測ができます。
熱画像解像度 | 320 × 240 (76800画素) |
温度分解能(℃) | 0.06 |
フレームレート | 60Hz |
測定温度範囲(℃) | -40~500 |
重量 | 850g |
寸法(mm) | 76 × 138 × 212 |
日本アビオニクス 現場診断用スタンダードモデル F50
最後に少し珍しいサーモグラフィーの紹介です。
日本アビオニクスから販売されているF50は、カメラヘッド脱着式の機種となります。
そのため工事設備の裏側など狭い場所の作業に向いており、プラントの重大事故予防診断などで活躍が期待できる一台です。
他にも操作がカンタンなオートポイントを搭載し、屋外でもオートスケールを最適に動作させる「スカイオフ」という機能もついています。
熱画像解像度 | |
温度分解能(℃) | 0.05 at 30 |
フレームレート | 7.5 |
測定温度範囲(℃) | -20〜350 |
重量 | カメラヘッド:約100g コントローラ:約400g |
寸法(mm) |
まとめ
いかがでしたか?
今回は、最近街中でもよく目にするようになったサーモグラフィーについて解説させていただきました。
人の体温以外にも住宅設備や機械の点検にも利用されるサーモグラフィーは、さまざまは現場で活躍しています。
使用する環境や性能を考慮して、ご自身にぴったりの機種を見つけてくださいね。
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システム開発課 Yoshida.K プロフィールはこちら
新卒で入社し、店舗での買取・販売スタッフ経験を経て現在は、アクトツールのマーケティング責任者として活躍中。多くのお客様との接客経験から得た工具に関する知識を活かして、ホームページの監修をメインに行っています。